企業・個人のサイバー攻撃対策とは?被害事例と具体的な対策方法を紹介

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「サイバー攻撃」という言葉をニュースで耳にする機会が増えましたが、「自分には関係ない」「会社がやってくれているはず」と思っていませんか?しかし、今の時代、サイバー攻撃は決して他人事ではありません。

この記事では、サイバー攻撃とは何か、という基本から、実際にどのような被害があるのか、そして最も重要な「企業と個人がそれぞれ何をすべきか」という具体的な対策方法まで、専門知識がない方にも分かりやすく解説します。

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サイバー攻撃とは

サイバー攻撃

サイバー攻撃とは、インターネットやコンピューター技術を悪用して行われる不正行為や妨害活動の総称です。

攻撃者は、マルウェア(悪意あるプログラム)の使用やシステムの脆弱性の悪用などを通じて、個人のパソコンやスマートフォン、企業や組織が管理するサーバーなどに不正にアクセスします。これにより、機密情報の窃取、金銭の詐取、システムの停止・破壊など、深刻な被害がもたらされることがあります。

サイバー攻撃の動機と目的

攻撃者がなぜサイバー攻撃を行うのか、その動機は様々です。

金銭の窃取

最も多い動機の一つです。偽サイトに誘導してクレジットカード情報を盗んだり、「ランサムウェア」というウイルスでデータを人質にとって身代金を要求したりします。

情報の窃取

企業の持つ新技術の情報や顧客リスト、個人の住所やSNSアカウント情報などを盗み出し、売買したり、別の犯罪に悪用したりします。

思想・政治的な主張(ハクティビズム)

特定の企業や政府の活動に反対する人々が、抗議のメッセージとしてWebサイトを改ざんしたり、サービスを停止させたりすることがあります。

嫌がらせ・愉快犯

特に目的はなく、自分の技術力を誇示したい、社会を混乱させて楽しみたい、といった身勝手な動機で行われる攻撃もあります。

主要なサイバー攻撃の種類

サイバー攻撃には多くの手口がありますが、ここでは代表的なものを紹介します。

マルウェア感染

ウイルス、ワーム、スパイウェアといった悪意のあるソフトウェア(マルウェア)に感染させる攻撃です。中でも最近猛威を振るっているのが、データを勝手に暗号化して使えなくし、元に戻すことと引き換えに身代金を要求する「ランサムウェア」です。

標的型攻撃メール

特定の企業や個人を狙い撃ちにし、業務に関係がありそうな巧妙な件名や本文でメールを送りつけます。添付ファイルを開いたり、URLをクリックしたりすることで、ウイルスに感染させられます。

フィッシング詐欺

銀行やショッピングサイト、公的機関などを装った偽のメールやSMS(ショートメッセージ)を送りつけます。本物そっくりの偽サイトに誘導し、ID、パスワード、暗証番号などを入力させて盗み取る手口です。

DDoS攻撃

特定のWebサイトやサーバーに対して、多数のコンピューターから一斉に大量のデータを送りつけ、処理能力をパンクさせる攻撃です。これにより、サービスが利用できなくなってしまいます。

不正アクセス

IDやパスワードを盗んだり、プログラムの弱点(脆弱性)を利用したりして、許可なく他人のアカウントや企業のシステムに侵入する行為全般を指します。

サイバー攻撃の影響

サイバー攻撃の被害にあった人

サイバー攻撃を受けると、個人にも企業にも、そして社会全体にも深刻な影響が及びます。

企業に対する影響

直接的な金銭被害はもちろん、システムの復旧費用や顧客への賠償金の支払い、社会的信用の失墜による顧客離れ、事業停止に追い込まれるなど、経営の根幹を揺るがす事態に発展します。

個人情報への影響

ID・パスワードが流出すれば、SNSアカウントを乗っ取られて不適切な投稿をされたり、ネットバンキングで勝手にお金を引き出されたりする可能性があります。住所や電話番号が流出すれば、さらなる詐欺の標的になる危険もあります。

インフラへの影響

電気、ガス、水道、交通、医療といった私たちの生活を支える社会インフラが攻撃の対象となることもあります。実際に海外では、パイプラインが停止したり、病院のシステムがダウンして診療ができなくなったりする事例が発生しています。

経済への影響

一社の工場が停止するだけで、部品を供給されている他の多くの企業の生産が止まってしまう「サプライチェーン攻撃」や、上場企業の株価が暴落するなど、国全体の経済活動に大きな打撃を与えることもあります。

サイバー攻撃への対策方法

サイバーセキュリティ

では、これらの脅威から自分や組織を守るためには、どうすればよいのでしょうか。ここでは「個人」「従業員」「企業」の3つの視点で、具体的な対策を詳しく解説します。

個人の対策【いますぐできる!家庭のセキュリティ対策】

まずは、私たち一人ひとりが家庭でできる基本的な対策です。

ソフトウェアを最新の状態に保つ

パソコンのWindowsやmacOS、スマホのAndroidやiOS、そして使っているアプリに「更新(アップデート)してください」という通知が来たら、後回しにせずすぐに行いましょう。これらは、新たに見つかった弱点(脆弱性)を塞ぐための重要な更新です。

パスワードを複雑にし、使い回さない

誕生日や名前など、推測されやすいパスワードは避けましょう。「大文字・小文字・数字・記号を組み合わせ、10桁以上」が理想です。また、面倒でもサービスごとに違うパスワードを設定し、使い回しはやめましょう。可能であれば、ID・パスワードに加えてスマホに届く確認コードなどで本人確認を行う「二段階認証」を設定すると、より安全です。さらに、近年は「パスワード不要」の認証方式(パスワードレス認証)も普及し始めています。メールやSMSのワンタイムコード、スマホ通知、セキュリティキーなどがその例です

フリーWi-Fiの利用に注意する

カフェや駅などで提供されているフリーWi-Fiは便利ですが、通信が暗号化されていない場合、やり取りの内容を盗み見される危険があります。フリーWi-Fi利用中のネットバンキングや重要な情報の入力は避けましょう。

従業員の対策【会社の情報を守るために、社員一人ひとりができること】

企業のセキュリティは、最新のシステムだけで守れるものではありません。「最後は人」と言われるように、会社で働く一人ひとりの日々の行動が、組織全体の防御力を大きく左右します。「自分は大丈夫」という油断が、最も危険なセキュリティホールになり得ます。


  • セキュリティ教育の受講


    会社が実施する情報セキュリティ研修は、「やらされ仕事」ではありません。攻撃の手口は日々巧妙になっており、昨日の常識が今日は通用しない世界です。eラーニングや研修には必ず参加し、「自分と自分の同僚、そしてお客様を守るための重要な業務」という意識で知識をアップデートし続けましょう。

  • 不審なメールの報告・連絡・相談


    「日本語が少し変」「差出人と内容が合わない」「異常に緊急性を煽ってくる」――。少しでも違和感を覚えたメールは、絶対に自分で判断せず、すぐに上司や情報システム部門に報告・相談してください。たとえそれが思い過ごしで、問題のないメールだったとしても全く問題ありません。 むしろ、「迷ったら報告」という文化が組織に根付くことが、本物の攻撃メールが届いた際の防波堤となります。あなたの一本の連絡が、会社への注意喚起につながり、被害を未然に防ぐきっかけになるのです。

  • 私物端末の業務用利用ルールを守る


    個人所有のスマートフォンやUSBメモリを、会社のルールを無視して業務用PCに接続するのは非常に危険です。家庭のネットワークは会社のシステムほど厳重に守られていないことが多く、気づかないうちにウイルスに感染している可能性があります。その端末を会社のPCに繋いだ瞬間、ウイルスを社内ネットワークに持ち込んでしまう「運び屋」になりかねません。会社でBYOD(私物端末の業務利用)が許可されている場合でも、指定されたセキュリティ対策や接続方法など、定められたルールを必ず守りましょう。

  • 情報の取り扱いに注意する


    カフェや新幹線、コワーキングスペースといった公共の場でPC作業をする際は、必ず覗き見防止フィルターを使用しましょう。席を離れる際は、たとえ短時間でも**「Windowsキー + L」で必ずPCをロック**する癖をつけてください。また、機密情報や個人情報を安易にメールの本文や添付ファイルで送受信することも危険です。会社のルールに従い、暗号化やファイル共有サービスなどを適切に利用しましょう。何気ないSNSへの投稿から、プロジェクトの情報が漏洩するケースもあります。常に「誰かに見られているかもしれない」という意識を持つことが大切です。

企業や会社の対策【組織として取り組むべき多層的な防御】

個人の意識向上と並行して、企業は組織として、攻撃者が嫌がるような「多層的」な防御壁を築く必要があります。一つの対策が破られても、次の対策で食い止めるという考え方が基本です。

技術的対策


  • セキュリティ機器の導入


    外部ネットワークとの境界には、不審な通信をブロックする**「ファイアウォール」を設置します。これは言わば「建物の門番」です。さらに、WebサイトやWebアプリケーションを公開している場合は、その脆弱性を狙った攻撃を防ぐ「WAF」の導入が不可欠です。これは「応接室や受付に配置された専門の警備員」に相当します。中小企業では、これらの機能を一つにまとめたUTM(統合脅威管理)**も有効な選択肢です。

  • エンドポイントセキュリティの強化 (EDR)


    社員が使うPCやサーバー(エンドポイント)の保護は最重要課題です。従来のウイルス対策ソフト(アンチウイルス)が「指名手配犯(既知のウイルス)」を見つけるのに対し、EDR(Endpoint Detection and Response)は「挙動不審者(未知のウイルスや侵入後の怪しい動き)」を検知し、迅速な対応を可能にします。攻撃の巧妙化によりアンチウイルスをすり抜けるケースが増えている今、侵入されることを前提としたEDRの導入は、被害を最小限に抑えるための「最後の砦」となります。

  • アクセス管理の徹底


    「最小権限の原則」を徹底しましょう。これは、従業員には「その業務に必要な最低限の権限しか与えない」という考え方です。例えば、営業担当者は経理システムにアクセスできないように設定します。万が一、営業担当者のアカウントが乗っ取られても、経理情報への被害は防げます。退職者のアカウントを速やかに削除するのはもちろん、人事異動の際にも権限をこまめに見直す運用が重要です。

  • 脆弱性管理と定期的な診断


    システムも人間と同じで、定期的な「健康診断」が必要です。専門家による**「脆弱性診断」を定期的に実施し、自分たちでは気づけないシステムの弱点(脆弱性)がないかチェックしましょう。さらに、より実践的な攻撃耐性を測りたい場合は、専門家が攻撃者役となって侵入を試みる「ペネトレーションテスト」**も有効です。診断で見つかった問題は、計画的に修正していくことが企業の責任です。

組織的・人的対策


  • セキュリティポリシーの策定


    会社で情報セキュリティに取り組むための「羅針盤」となるのが、**セキュリティポリシー(基本方針)**です。パスワードのルール、データの取り扱い基準、インシデント発生時の報告手順などを明確に文書化し、全従業員がいつでも参照できるようにします。重要なのは、作って終わりではなく、事業内容や社会情勢の変化に合わせて定期的に見直し、従業員に分かりやすく伝え続けることです。

  • インシデント対応体制の構築 (CSIRT)


    被害が発生した際に誰が、何を、どの順番で行うのかを事前に決めておくインシデント対応体制が不可欠です。専門チームである**CSIRT(シーサート)**を組織し、被害状況の把握、原因調査、復旧作業、関係各所(警察、監督官庁、顧客など)への連絡といった役割を定めておきましょう。専門部署の設置が難しい場合でも、担当者を決め、緊急連絡網や外部専門家との連携体制を整えておくだけで、いざという時の動きが全く変わります。

  • 従業員への継続的な教育・訓練


    知識は使わなければ錆びつき、忘れてしまいます。攻撃手法が日々進化する以上、教育や訓練は「予防接種」のように定期的に、そして継続的に行う必要があります。特に、標的型攻撃メール訓練は効果的です。訓練メールに騙されてしまった従業員を責めるのではなく、「なぜ騙されてしまったのか」「どうすれば見破れたのか」を全員で共有し、組織全体の対応力を高める良い機会と捉えましょう。

  • バックアップの取得


    ランサムウェア攻撃に対する最後の、そして最強の「命綱」がバックアップです。重要なデータは、「3-2-1ルール(3つのコピーを、2種類の異なる媒体に、そのうち1つはオフサイトで保管)」に則ってバックアップを取得しましょう。クラウドストレージや外付けHDDなどを組み合わせ、一つは物理的に離れた場所(社外など)に保管することで、火災や自然災害、そして社内ネットワーク全体が暗号化されるような最悪の事態からもデータを守れます。そして何より、定期的に「本当に元に戻せるか」を確認する復旧訓練を忘れてはいけません。

サイバー攻撃の事例と情勢

サイバー攻撃の情勢

国内の場合

近年、国内でも被害は深刻化しています。ある病院ではランサムウェア攻撃により電子カルテシステムが停止し、長期間にわたって通常の診療ができなくなりました。また、大手自動車メーカーの取引先が攻撃され、部品の供給が止まった結果、国内の全工場が稼働停止に追い込まれるというサプライチェーン攻撃の事例も発生しています。

国外の場合

国外ではさらに大規模な攻撃が発生しており、社会インフラが標的になっています。米国の石油パイプライン企業がランサムウェア攻撃を受け、パイプラインの操業が停止。ガソリン供給に大きな影響が出て、社会問題にまで発展しました。また、国家が背後にいるとされる攻撃グループによる、他国の政府機関や重要企業を狙った情報窃取も活発化しています。

まとめ

サイバー攻撃は、もはや映画やニュースの中だけの話ではありません。企業にとっては事業継続を脅かす重大なリスクであり、個人にとっても財産やプライバシーを侵害する身近な脅威です。

この記事で紹介した対策は多岐にわたりますが、完璧なセキュリティは存在しないからこそ、技術的な対策と、私たち一人ひとりの「怪しいものには近づかない」「すぐに相談する」という意識の両方が不可欠です。

まずは「パスワードを見直す」「ソフトウェアを最新にする」といった、今日からできることから始めてみませんか。その小さな一歩が、あなたとあなたの周りの大切なものを守ることにつながります。

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